
「生きるのがツライ? なら逃げちゃえばいいんですよ」
ずっと先の未来。人間はそれまでの姿形だけでなく、獣人・サイボーグ・魔族など多様な姿を持つようになった。東京の街は、AIが管理する高い壁に囲まれた数多の地域「クラスタ」となり、自由な行き来をやめ、それぞれが独自の文化・常識を育んだ。人々は、自らが生まれたクラスタの常識を基準に幸せな人生を送る。
しかし、なかには自らのクラスタに適応できない者も現れる──。
そうした人々を、別のクラスタへと「逃がす」ことを生業にする者たちがいる。
「逃げたい人」たちから依頼を受け、あらゆる方法を駆使してAIの裏をかき、本来は不可能であるクラスタ間の移動を成し遂げる者たち──「逃がし屋」。
逃げて、逃げて、逃げまくる!!
逃げたい人をお手伝いする、5人の逃がし屋たちの物語──!
個々の都市が独立した生活圏“クラスタ”となった未来。その一つ御茶ノ水大学園都市の学生・エクアの本当の正体は「逃がし屋」。彼女の元に他の“クラスタ”に逃げたいと依頼が来るが、依頼主はまさかの彼女の学校の教師であった――
新宿ヤクザ街。三大ヤクザの一つ関八州連合の大親分トイチから、新宿から逃げたいと依頼が来る。その理由に、逃がし家の一味であり新宿出身のフェレスは驚くが──
東西に分断された池袋ペン人街。東側に所属する水中バレエ団ペン人たちが、エクアたちに表現の自由を求めて西側に逃げたいと依頼する。しかし、作戦の途中でエクアが捕まってしまい──
逃がし屋の作戦中の事故で、二つの身体に分かれてしまったマルテース。しかし、そんな状態でも「彼女たち」の脳内では、いかにしてエクアを独り占めしてやろうかという欲望が渦巻いており、脳内で会議が巻き起こるが──
クラスタを管理するモデレータの教えにより、パンツを忌諱し常にノーパンでいるお台場温泉郷の住人たち。しかし、彼らに教えを説く女神官ビバルデは、パンツを穿きたい誘惑からエクアたちに依頼をするが──
エクアが風邪でダウン。リーダー抜きで秋葉原万歳商店街からハチローを逃がすことになった逃がし屋たち。極度の優柔不断な性格の依頼人は、何から何まで自分ひとりで決められず──
逃がし屋の仕事がないある日。閑古鳥の鳴く喫茶ボストークを心配したマルテースは、エクアとフェレスにお店のリニューアルを提案する。一方、地下倉庫ではアルガとウルラが金目のものを探していて──
人々が心豊かに暮らせる街として設計された白金プラチナシティ。しかし、いつしか人口減少の一途をたどってしまい、いまやたった二人だけのクラスタに。依頼者はその片方である老執事。もう一人の幼くわがままなお嬢様はひとり取り残されることとなり――
クラスタ自体が監獄である府中プリズン。ここではモデレータである所長による暴力と恐怖によって、受刑者たちが不当に支配されていた。そんな中、エクアたちが受けた依頼は、受刑者全員を逃がすこと。逃がし屋の面々は、府中プリズンに潜入するが――
ある日、エクアの力が急に使えなくなる。今までなかった事態に、動揺するも、時を同じくして、喫茶ボストークが監察官ドローンに襲撃される。命からがら逃げる逃がし屋たちだが、そんな中、御茶ノ水クラスタのアップデートが告げられる。その内容は「逃がし屋の取り締まり強化」であった――
全クラスタから追われ、行き場のないエクアたち逃がし屋。打つ手のない彼らは、今まで逃がしの依頼をしてきたMこと世界の管理者ザ・マネージャーを頼ることに。しかしザ・マネージャーと連絡を取るための端末は三軒茶屋魔法街にしかない。そんな彼らのピンチを救ったのは――
ザ・マネージャーからのメッセージに隠された「逃げたい」という意思を感じたエクアは、指名手配にもかかわらず、逃がし屋として見過ごせないと、ザ・マネージャーを逃すため大江戸城へ向かう。しかし、強固な警備システムの前に次々と倒れる仲間たち。エクアがたどり着いた先には――